週間店長情報 晩期商法実践は勇気が必要 2020.02.03
「水曜日の発注は早すぎる」とお叱りを受けます。これを靴屋が聞くと「何と贅沢な」と言うでしょう。ファッションシューズとかおしゃれ靴の新作発表は6~8ヶ月前です。今だと秋冬物の注文を出す事になります。「ふざけるな」と言いたいですがこれが現実です。靴はメーカーに注文を入れます。靴にはサイズと色があります。大根を5本とか言う注文ではないのです。一揃い買うだけではないです。売れ筋のサイズの在庫は1足とはいかないのです。実際に販売し始めると売れるサイズと色がはっきりします。その時はメーカー在庫頼みですが売れる物は各店一緒です。結果「この色の○サイズは在庫ありません」となるのです。チャンスロスが頻繁に発生しています。更に困るのが売れなかった靴の処分です。特価にしたから売れるものではありません。この在庫も膨大です。型が変わらないビジネスシューズとかコンフォート靴なら良いのでしょうがそれだけでは商売にならないのが一般の靴店です。靴業界は無駄が多いのです。売れ残った靴を再生して販売できると良いのでしょうがそんな話を聞いたことがありません。無駄をなくすのならオーダー靴がベターですが高価です。セミオーダー靴もありますがまだまだ普及していません。3Dプリンターがあるのですからいずれこれで靴型を作り工房で安価なオーダー靴作りという商売が出てくる事を期待しています。3日で靴が出来上がる時代が来るかも。
衣類業界もメーカーは早くから商品製作しています。こちらは3ヶ月ぐらい前からでしょうか。シーズンに入って店に並べると売れる色と柄がはっきりします。この場合もメーカー在庫頼み。在庫切れで「今からすぐに作る」とはならないのです。これもチャンスロスです。
期待できる機械が出来ています。聞いたのは20年以上前です。教えてくれたのは当時の五本指靴下製造会社社長。「縫い目の無いTシャツが作れる編み機」と言うのが売り出されていると言うのです。その時は「ふむふむ」と言う程度。この機械が凄いのは裁断と縫製が不要な事です。糸から作るからです。Tシャツは通常型紙があり布を裁断します。その後縫製して出来上がります。この工程がないTシャツです。ついでに言えば端切れが出ません。Tシャツ以外にいろいろなものが作れる事を後から知りました。この編み機を世界の有名一流アパレル企業が使っているのです。日本ではユニクロ。これが一般化すると売れる色とサイズがはっきりした段階で製造が可能になります。2~3日で出来上がるのです。今は高価でも量産化すれば価格も下がると予想します。この編み機を製造している会社は世界で1社。和歌山県にあります。完全に独占状態です。
晩期商法は最盛期に在庫とアイテムを十分に置く方法です。今だとバレンタインセールでのチョコレートの在庫でしょう。今 欠品が出ても大部分の店は補充しないのが普通です。売れ残りが怖いからです。これを補充すると売れると言うのが晩期商法。
シーズン商品に使えそうです。今はPOSレジもあるので一年の内一番売れる月は簡単に判る筈です。POSが無くても仕入れ伝票を見れば一目です。一番売れている月の在庫の量を増やすのです。2割5割10割増やすと売上げがどうなるかは経営コンサルタント会社が判っているはずですが我々に教えてくれません。自店で試してみるしか方法はありません。毎年の在庫量を参考にして増減するしか手がありません。「そんな事を言ったってスペースがない」と言うのが大部分の店です。この場合は「圧縮付加」をしてスペースを作るのです。
りんごのよく売れている店の店主にコツを聞いたことがあります。りんごは大体1ケース買うのが一般的。半分近くになると次の仕入れをするのもお約束。この店では一箱がまだ充分にある状態でも仕入れます。充分にある状態にりんごを投入すると溢れる状態になります。皆さんの店にあるりんごのように整列していません。「りんごは大盛りにすると売れる」と店主。何でも半分以下の在庫になると売れが鈍くなるんだそうです。晩期商法実践は勇気が必要です。