週間店長情報 美味しすぎない 2022.11.14
書いたことがありますが付き合いのある医師が愛人と旅行に行く時大阪から京都までのかばん持ちをしたことがあります。駄賃がとびきり高価なハムでした。あごが落ちるくらい美味しかったです。ハムだけでなく「なんか食いたいもんあるか」と言うので当時出回り始めたラフランスをおねだり。初めて食べました。医師は「とびきり美味しい物を食べる必要性」を説いてくれました。毎日食べられないけど味わっておく必要があるというのです。
セミナー講師だった武田邦彦先生は「僕はまずい物を食べるのが趣味」だとセミナー後の懇親会で話してくれました。生協で買って食べた弁当のまずいのに驚いたと言っていました。いつもまずい物を食べていると御呼ばれで美味しい物が出た時食べ物が一層美味しく感じるのだそうです。
昔読んだ経営書の中で米国人向けの高級ビジネスホテルの喫茶コーナーで出すコーヒーのアドバイスについてのくだりがあります。アドバイスは「ほどほどまずいコーヒーを出すと良い」でした。高級ホテルで出すコーヒーはとびきり美味しいコーヒーと言うのが普通。まずいコーヒーがいいというのは「米国人はそんなに丁寧に毎日コーヒーを入れていない」というのが理由です。急いでいる時はやかんに豆をほおりこんで作る事もあるとも。
日本にあるイタリアレストランチェーン経営者は「そこそこの味のパスタ料理がいいんだぁ」と言うのです。まずくなければ良いというのです。それが長続きするコツだというのです。フランス料理の全国チェーンが出来ないのは「美味しすぎるからダメだ」言うのです。
美味しすぎる料理は「晴れの日」の食べ物です。祭りに食べる料理もそうです。それが毎日食べ続けると飽きるのです。普段食べる物は飛び切りおいしくなくても良いのです。
「おいしすぎては売れない」チキンラーメンの生みの親、安藤百福の言葉です。味のインパクトが強すぎると、当分リピートはしないとも指摘しています。美味しすぎるレストランの御飯は頻繁に食べようとは思いません。味を覚えているからです。
毎日食べても飽きない味があるそうです。それは「うす味」であり「濃い味」は飽きてしまうというのです。自分好みでちょい足し出来る程度の味が飽きない味だと知りました。「お好みで○○を足して」食べるのがちょうどいいのです。
商売も同じかもしれません。あきないというくらいです。毎日、毎年同じ仕事、作業をしていると飽きるのです。僕の仕事は単純作業です。発注書を作り入荷した商品を仕分けして配達する仕事 これが毎週続きます。皆さんだと店を開けて商品を並べて、客を待ち、接客してレジを打ち、時間が来れば閉店、閉店後に発注して家に帰ります。僕はこの繰り返しを40年以上続けています。これでも飽きないのですから不思議です。月末になると支払いが心配です。これもずーと続いているのです。飽きもせずに。支払いの心配の無い生活が良いと考えがちですがベストではないようです。
以前フットマッサージイベントで老婦人と話した事があります。困ることが何も無いと言う人でした。主人は立派、子供にも不安の点はなく、ご主人と二人暮らし。理想的な老後を送っている老婦人が僕に「なんにもおもろうない」と言うのです。心配事の無い生活はつまらないらしい。
特別なアイテムばかり売り続けてはいけないともいえます。特別な物は続かないのです。おせち料理も1年に1回です。これが毎月となると皆さん飽きるでしょう。年に1回だけ食べるからいいのです。僕だと餅は年に1回 正月1日の朝だけです。昼とか夜にもう一回はないです。
ほとんどの人は「美味しい物」が沢山あると繁盛すると考えているのです。現実は毎日売れる物は地味なアイテムです。その中で「たまに」変わったアイテムがほんの少しあると良いのです。美味しすぎる物より「身体に優しい」物が良いとも言えるのです。身体が喜ぶ食品は飛び切り美味しくない場合も多いのです。美味しすぎないのが良いのです。