週刊店長情報 てんぐさのかがく 2019 9 30
この時期てんぐさかい。シーズンが終わっているのと違うの?と聞かれそう。「おめぇって科学がすきやねぇ」「今回はひらがなにしました」「ひらがなにしたら何か変わるんかい」「やさしい言い回しになる筈です」「それにしてもてんぐさって何か特別な物かい。味もないし特別な成分があるとは思えん」「ミネラルは豊富です」「こんな日陰アイテム話になるんかい」はいです。
てんぐさの話をするのは初めてです。これだけ長く続けていても初めてというのがあるのです。自然食品店ではほとんど見られません。スーパーでもありません。今の人は使い方を知らないと言うか使いこなせないのです。実際には毎年生産採集されています。主に寒天の原料として。
てんぐさについても知る必要があります。てんぐさという物はありません。「ええっ ウソ 何で」と言われるかも知れませんが本当です。紅藻類てんぐさ目てんぐさ科の藻です。海藻と海草の違いって判りますか?海藻は胞子で増える陰花植物 海草は花を咲かせ種で増える顕花植物。
てんぐさは収穫場所 時期 磯か沖取りかで弾力性や粘りが違ってきます。収穫年度でも違うそうです。海水温度が関係しているのでしょう。集荷業者は粘度 弾力を調べています。離水率というのもあるそうです。販売先は和菓子屋。代表的なてんぐさはマクサ(これが一般的に言うてんぐさ) 以下はあまりところてんには使われていません。ヒラクサ(あらめと呼んでいます)オバグサ、オオブサ、キヌクサ。粉寒天原料のオゴノリは紅藻オゴノリ科(世界中で養殖されている)
産地は伊豆諸島(これが一等級らしい。腰がある) 伊豆半島、徳島、愛媛、高知(それぞれ粘りがある)和歌山(糊分が多い)日本全国で収穫出来る。海外産地のものも出回っています。
赤草 収穫後天日干し 収穫後水に付けて天日干し
晒草 黄晒(収穫後水に晒して天日干し) 青晒(赤草を3ヶ月以上経過後晒したもの)
とら晒(赤草を一部だけ晒したもの。粘りが出る)
当方取り扱いのてんぐさは 祝島(山口県) 今年の夏 磯取り(これの方が上物だと) 収穫後水に晒しを4~5回繰り返したものを天日干ししたものです。黄晒草です。
料理はところてんだけでなくいろいろ使えます。酢の物の使う三倍酢にカラシ+ところてん
ところてんに麺つゆをかけて蕎麦のように食べる。福井県では冬の風物詩水羊羹作りが有名です。
ところてんと寒天では同じものを作っても違うのです。寒天はところてんを凍結乾燥して作ります。一度熱が加わっているのです。しかも凍結乾燥です。風味は期待できません。
寒天の原料を調べました。糸寒天はまくさ。板寒天はマクサとオゴノリ、粉寒天はオゴノリです。オゴノリっててんぐさの仲間ではありません。オゴノリの国産もほとんどありません。世界中で養殖されています。製造方法も違います。糸寒天はところてんを筒で付いて糸状にしたものを凍結乾燥 板寒天は糸状にしない物、粉寒天はところてんに圧力をかけて強制的に水分を抜き乾燥粉砕して作ります。それぞれ食感が違います。糸寒天は弾力があり滑らか。板寒天は少し劣ります。粉寒天は歯応えが硬いのが特徴です。共通しているのは一度ところてんにする事です。てんぐさから作ったほうが断然美味しい筈です。店の粉寒天原料は国産でしょうか?
天然寒天と書いてあるのが上物です。氷点下で天日干ししているからです。氷点下にならない場合は冷凍庫で乾燥させます。天然寒天が昔ながらの乾燥方式です。
付き合いのある店から「いぎす豆腐」と言うのがあるのを教えてもらいました。調べるといぎすという紅藻がありそれに大豆粉(黄な粉は不可)を入れ干し海老、ねぎ等を入れて固めたもの。黄な粉が不可なのは煎った大豆を粉にしたものだから。てんぐさからも作れます。これだとてんぐさ豆腐と呼べそう。にがりを使わない豆腐。にがりはアクです。にぎす豆腐は年中作ってもいいでしよう。大豆粉は生食してはいけません。有害物質が含まれていますが加熱で無毒になります。