週間店長情報 がんもどきについて 2020.11.09
当方取り扱いの豆腐の中で異色なのが「榛名の恵み」です。ぼうな ではありません。はるな と呼びます。群馬県にある榛名山の麓で製造されています。理屈的には一番美味しい豆腐です?
榛名の恵みは充填豆腐です。充填豆腐と普通の豆腐は製造時の豆の洗浄回数が違いすぎます。バブリングと言う作業を繰り返すのです。雑菌を取り除く為です。豆腐の作り方は同じです。違いは製造後一度も水につけない事です。普通の豆腐は製造後水につけます。その後カットして容器に入れシールしますが充填豆腐は製造後に充填容器に詰めます。その上容器は頑丈に作られています。これは豆腐の缶詰です。缶詰だと非常食としての役割も期待できます。製造会社では10年前の製造品も保管しています。食べられます。と言っても誰も信用しないでしょうが。本当です。
「製造後1回も水に漬けていない」これが美味しい理由です。水に漬ければ少しずつ旨み成分は出て行くと考えます。「灰汁が出るから美味しくなる」と言う理屈もあります。どちらかは食べ比べてみるしか手がないです。栄養的には充填豆腐の方に分がありそうです。栄養はたぶん一番です。
伊勢丹で販売している一丁千円の豆腐 製造当日は美味しいと聞きました。次の日食べると普通の豆腐と同じだとも言います。皆さんの店で販売している豆腐も次の日には味は落ちているはずです。「そんな事はない ウチの豆腐は次の日でも美味しい」と言われる店主がいるかも知れません。ならその根拠を示して欲しいです。「豆が違う にがりが違う にがりの量が少ない」と言う返事が返ってきそうです。豆腐の美味しさを説明できるものさしがないのです。これは実現可能です。豆の品種で糖質(甘さ)の%が変わります。もう一つはにがりの含有量。100g当りの量を示せば誰でも違いが判るのです。手作りの場合 毎回違うかもしれませんがだいたい判る筈。機械作りなら正確に判ります。ここまで追求している店主 店長を知りません。「極限までにがりの量を減らしている」と言う話を聞きましたが通常品は何%当方のは何%と言う店長を知りません。これが科学。
ありぁ 前置きが長くなりました。がんもの話をすると決めましたがあまり資料がないのです。これだと半分くらいで終わるかも知れないと思い前置きを長くしました。ごめんちゃい。
当方取り扱いのがんも 京がんも ひじきがんも エビ入り京がんも がんもどき 具だくさんがんも です。東京で作っているのに京がんも。不思議でしょう。でも訳ありです。関東のがんもどきは平べったいのです。京都は丸い。確かめたら丸いがんもを「京がんも」と言う返事。
落語の「寝床」にがんもどきの作り方を説明するくだりがあります。義太夫を習い始めた旦那が、自慢の喉を聞かせたくて、番頭の定吉に長屋の連中を呼びに行かせるのですが、呼ばれた方は旦那の義太夫は聞けたものじゃないのを知っているので、何とか口実を作って欠席します。定吉が、豆腐屋の言い訳としてがんもどきの作り方を長々と述べるくだりがあります。江戸時代には食べられていたようです。それ以前は油が貴重品だったので高貴な身分の人しか食べていない。
がんもどきの製造は木綿豆腐を崩し充分に水分を切り、つなぎに山芋のすりおろしを入れ練った中に具(加役 加料=かやく)として、笹がきごぼう、ニンジンのみじん切り、刻んだきくらげ、昆布、ごま、麻の実などをいれ機械で攪拌し、一定の形に成型。これを最初は低温油、その後高温油の二度揚げして出来上がります。
名前は関東では「がんもどき」関西では「ひろうす」と呼ばれています。がんもどきの名前の由来は雁の肉に似ているからだとか。ひろうすはポルトガル語フィロウスの当て字 ポルトガルのフィロウスとは小麦粉をこねて油で焼いたお菓子の事です。お菓子が何で食品に変わったのかは不明。がんもどきも元はこんにゃくを使った点心「槽鶏」俗称として「がんもどきなるべし」と古い本に書かれ槽鶏が親しみやすい日本語がんもどきになったと言います。こんにゃくがとうふに入れ替わった原因も不明。丸和さんでは手作りにこだわっている為一人付きっ切りだと聞きました。